第0相 | 生前相 | これは、私たちが日常で目にする生きた身体の姿です。肌には血色が宿り、内臓や骨格は調和のうちに機能しています。「生前相(せいぜんそう)」とは、はかない生命の美しさと活力を映し出し、仏教の観想において命の無常を静かに思い起こさせます。 | | | | | |
第一相 | 脹相 | 生命が途絶えた後、身体は変容を始めます。内部にガスが溜まり、かつて親しんだ姿は不自然に膨らみます。「脹相(ちょうそう)」は、肉体の無常の第一歩を示し、生前抱いていた執着がやがて崩れ去ることを静かに告げています。 | | | | | |
第二相 | 壊相 | 膨れた身体は次第に崩れ、皮膚は裂け、肉は形を失っていきます。「壊相(えそう)」は、保たれていた身体のまとまりが壊れていく様を示し、肉体への執着が一時の幻想であることを教えます。 | | | | | |
第三相 | 血塗相 | 裂け目から流れ出す血は、大地に広がり、生命の名残を鮮やかに染め上げます。「血塗相(けちずそう)」は、かつて命を育んでいた血が、大自然へと還っていく様を映し出します。 | | | | | |
第四相 | 膿爛相 | 腐敗が進み、身体は融けはじめ、膿となって滲み出していきます。「膿爛相(のうらんそう)」は、固い肉体すら流れ、崩れていくさまを示し、形あるもののはかなさを静かに伝えます。 | | | | | |
第五相 | 青瘀相 | 肉体はさらに朽ち、青黒く変色していきます。「青瘀相(しょうおそう)」は、美しさや親しみの記憶が失われ、認識を越えて姿を変えていく無常を示します。 | | | | | |
第六相 | 噉相 | 生命を終えた身体は、他の生き物たちの糧となります。狐、狼、鳥たちが肉片を奪い合い、引き裂かれていきます。「噉相(たんそう)」は、自己と考えていたものが自然の大きな循環に還っていくことを静かに教えます。 | | | | | |
第七相 | 散相 | 身体はばらばらになり、頭も手足も元の姿には戻りません。内臓も散らばり、統一された形は失われます。「散相(さんそう)」は、私たちが自己と錯覚してきた存在が、要素に還る過程を映し出します。 | | | | | |
第八相 | 骨相 | やがて肉は失われ、骨だけが残ります。脂をまとったもの、白く乾いたもの、散らばるもの――その姿はさまざまです。「骨相(こつそう)」は、最も耐えうる形すら、やがて塵へと帰すことを静かに語ります。 | | | | | |
第九相 | 焼相 | 最後には、骨すらも火に焼かれ、灰と燃え残った破片だけが残ります。「焼相(しょうそう)」は、物質的存在のすべてが大地へと還りゆくことを明らかにし、仏教の無常観を深く悟らせます。 | | | | | |